松沢呉一の店外講習
風俗取材に携わって10余年。ひたすら「エロ街道」を歩き続ける著者が、お店スタッフや女の子との交流を重ねて得た、風俗業に関するさまざまな知見をここに開陳。 最終回は「個性が大事」というお話です。

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区切り

  こういった個性の打ち出しは店がやらせることではなく、店の誰もがやったら面白くなくなるため、自分で考えるべきだ。

もちろん、「マット技では誰にも負けない」「こんなフェラは私にしかできない」といったように、王道のプレイで特色を出すのも手だし、本来はそうあるべきかもしれないが、ここで特色を出すよりも、邪道であろうが、他のことで特色を出した方が簡単だ。遊び慣れてない人に「世界で唯一のフェラ」を披露したところで、理解してくれるかどうかわからないが、手品を覚えて、マ×コから鳩を出したら、どんな客でも驚いてくれ、客は一生忘れまい。

その点ではキャリアのあるソープのおねえさんたちは、それぞれに特色のあるワザをもっていて感心する。椅子洗いやマットでオリジナルの技を入れ込んでいるのは王道の個性化だが、店のサービスとは関係なく、アロママッサージをやってくれたり、塩を使ったマッサージをしてくれる人もいる。

店によっては客に渡すライターなどを用意しているが、そういった既製品ではなく、自分でハンカチやソックスなどのプレゼントを用意している人もよくいる。部屋持ちのおねえさんたちは、自分の好みに部屋を装飾して、個性を出すのもよくいる。

ソープでは、店がサービスを徹底する分、王道のテクニックだけじゃなく、それ以外のところでも個性化を早くから実践してきているわけだ。

どのコについても、同じサービスを受けられる金太郎飴的店づくりだけではなく、個別の女のコの個性を出していくべき時代には、女のコたちの努力や工夫が求められ、その努力や工夫ができる余地を店が用意することが必要なんだと思う。

なんてことを書くと、「私にはそこまでできない」なんて思うコたちもいることだろうが、なにも人にできない技術を身につける、人にないキャリアを積む必要はなく、ちょっとしたことでも個性を出すことは可能だ。

店名は個性的なのに、女のコたちの名前は平凡なのが多い。そのためになかなか名前を覚えられないことがある。「あゆ」「あや」「のりか」「ゆうか」なんて芸能人の名前をパクるのが多い中で目立つんだったら、「イチロー」とか「Gackt」とか「じゅんいちろう」なんて男の有名人の名前をパクッた方がいいかもしれない。一郎という名前のお客がイチローを指名して、「イチローちゃん、僕はもう出そうだよ」なんて言うのはイヤだから敬遠するかもしれないけど。

お客さんの中には、「普段は貞淑、プレイは淫乱」というのを好むのがいて、「淫乱」という演出をするために個性的な行為、個性的なセリフを言ったっていい。

私の覚えているのでは、途中で休憩した時にも、自分でずっとクリをいじって感じているコがいた。このくらいなら誰でもできるだろう。


区切り

  最近私がすごく印象に残っているのは、射精した精液を拭いたティッシュペーパーを広げてニオイを嗅いでいたコだ。

本人によると、「いつもしているわけじゃないですよ」とのことだったが、「男の人の精液ってみんな同じニオイがしますよね」と言っていたから、時々はやっているらしい。

これも相手を選んだ方がいいだろうが、こんなコは初めてだったため、強く印象に残った。そのあと、ある場で彼女に会った時に、「あっ、精液のニオイを嗅ぐコだ」と思わず言ってしまい、彼女は「そんな言い方しないでくださいよ」とムチャクチャ嫌がっていたが、どうであれ認知されるのは悪いことではないのだ。

フェラも得意じゃない、見た目も特徴はない、努力したり、考えたりするのは面倒臭いというコたちは、せめて精液のニオイでも嗅いでみてはどうだろう。

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