すごいことしてる感覚なんてない
──SM、好きなくせにそれに対してさえ醒めているあなたがいるんだね。
「本物の職業M女になろうとかは思わないんですね。そこまではのめりこんでないっていうか。ああ、ここまで見たから次は普通でいいなって気持ちも今はあります。好奇心が一番強かったんだって。
でもやっぱり今の彼といると楽しいんですよ。今までで一番の喜びをくれるのは確か。いつまでもつきあってしまうかもしれない。なんか、女って面倒ですよね。幸せなだけじゃ足りないの。でも愛されないのは嫌。欲張りなんですよ。いつもその両方の気持ちを行ったり来たりしている」
──それはあなたそのものっていう感じだよね。真面目に見えて大胆。すごく激しいくせに醒めていて。
「そうなんです。ドライなんですよ、私。すごい体験も混ざっているかもしれないけど、私にとってはすごいことでもなんでもなくて、ただの好奇心で。もっとドキドキできるかな、と思って誘いに乗るんだけど、し始めた途端に醒めちゃうことの繰り返しで。だからすごいことしてるなんて感覚、全然ないんですよね」
そう言うと彼女はあはは、と笑った。これから仕事はどんなことがしたい? と聞いたら、ウェディングドレスを手がけたいんだという。素敵だ。そして彼女はいつウェディングドレスを着るのだろう。どんな花嫁になるのだろう。ドレスはみな純白だけど、その中に隠された肉体は、それぞれに違う色の炎を隠している。
じゃあ、写真をお願いします。と言うと彼女は黒い服を脱いだ。その服の下には、赤のリボンでバイピンクされた、シースルーの紫のスリップ。それは彼女の白い肌にとても映えた。
彼女はだんだんに大胆になっていく。少女らしい顔にだんだん情欲の表情が宿っていく。普段は無彩色のくせに、脱ぐとカラフルな炎がともる。『魔性』という言葉が似合う女の子に、私は今夜出会った。
(文中はすべて仮名です)
2003.12.5up