変態で素っ気なくて冷たいのがセクシー
「東京に出てこようと思ったのは、広島の繁華街の洋品店に勤めて3年経った頃なんですよ。小さい店だったんで、ひととおり仕事を任せられるようになったら、逆に物足りなくなっちゃって。そのままいけば2号店の店長くらいにはなれるって話をいただいたんですけど。もう少し勉強したいなって。
私、ロックが好きで。広島の駅前にネオポリスホールってライブハウスがあるんですけど、そんなとこ通って音楽聴いてたら、やっぱり空しいから東京行こうって、そういう気持ちになった。ミッシェル・ガン・エレファントとか。あれ広島のバンドなんですよ」
──うん。あなたみたいな一見おとなしいんだけどお洒落が好きみたいな女の子が、ああいうロックを聴くよね。で、恋のほうはどうだった? 地味めだけど内に情熱を秘めた女の子の恋は(笑)。
「18歳の時が最初なんですよ。よく行く古着屋の店員だった人で。全然顔はタイプじゃなかったんだけど。私、顔は醤油系の、細面であっさりした人が好きなんですけど、彼はすごく濃い感じで。もと柔道部。体もがっちりずんぐり堅いって感じで。顔がまた妖怪人間ベラに似てて。27歳。でも不思議な匂いのある人だったんです。体臭じゃなくて、なんかセクシーな感じの匂いっていうか。つきあってわかったんですけど、あれが変態の匂いなんだろうな。すごい変態だったの。
なんとなくデートに誘われて、まあ普通のコースですけどバイクで呉の海に行って。そこのラブホで。で、すぐにサディストなんだってわかった。最初は別にすごいことされちゃうわけじゃないんだけど。なんか残酷な雰囲気で。いじめられるよなセックスで。それが回数を重ねるごとにすごくなる」
──縛りとかローソクとか?
「ううん。そのへんは彼は嫌いだったんで。言葉責めが主ですよね。彼ハンサムじゃないくせにモテてたから。たくさんガールフレンドがいて。私のほかに3~4人いたみたいで。言うんですよ。『俺はほかにたくさんいて、おまえなんかその他大勢のひとりなんだから、抱いてもらえるだけでありがたいと思え』みたいなこと。それでもしその中で生き残っていきたいなら、もっと努力するんだな、なんて言って、あたしの口にちんこ押し込んできて、延々舐めさせたり。
これがたまんないんですよ。変態で素っ気なくて冷たいのがセクシーっていうか。優しくされると興味湧かないけど、そっけない人にこそ惹かれるって、あるじゃないですか。
で、彼は本当にSM好きだったみたいで、やってる間じゅうあたしのことを侮辱するようなことばっかり言ってるの。まるで小説みたいな台詞ばっかり。でもそれがハマってるから、こっちも濡れる。燃えましたよ。私が、最初は痛いだけだからあんまりしたいとか言わなかったのが、だんだん快感がわかってきて、反応も変わってくるし、欲しがったりするじゃないですか。そうすると『ほんとうにおまえはスケベに変わったな。こんなのがいいのか?』みたいに言われて『おまえにはこれがお似合いだ』なんて言われてバイブ突っ込まれたりして」
──最初がそれだと、あなたもかなり方向性が決まってしまうよね。
「そうかも。でも私も好きだったんですよ。まあ彼のほうが変態度は強かったと思いますね。ちんこは小さかったですけどね。デニムフェチで、お尻のラインがぐっと出るホットパンツが好きで。いつも服装にはうるさかった。挿入から射精までは早いんですよ。でも技巧派だったな。延々30分以上エロトークしながらいじってくれて、いきなりねじ込んできてイクの。でもその無理やり感がよくて。月に1回くらいずつ、1年半会いました。ご飯を一緒に食べたことはなかった。会うとやるだけ。
で、彼はある時行方知れずになって、古着屋も突然辞めてしまって。会えなくなりました。住所も知らなかったし。素性は明かしてくれない人だったんで」